モラハラはやばいよね

久しぶりのお店

先日、家族で食事に行った。

その店は独身の頃によく通っていたお店である。

久しぶりだった。

懐かしかった。

しかし。

ひとつ気になることがあった。

女将さんがいないのである。

いつもいた。

ずっといた。

なのに見当たらない。

私は不思議に思いながら食事をしていた。

帰り際に聞いた話

帰る時。

たまたま知り合いが来店した。

私はこっそり聞いてみた。

「女将さん最近見ないけどどうしたの?」

すると返ってきた答えは衝撃だった。

「逃げたんだって」

逃げた。

なかなか強い言葉である。

さらに知り合いは続けた。

「大将、昔ながらの昭和の職人気質だからなぁ」

私は妙に納得してしまった。

どちらが悪いとかではない。

事情も分からない。

本当の理由も知らない。

ただ。

昔から大将は厳しかった。

お客さんには本当に優しい。

料理もおいしい。

でも従業員や女将さんには厳しかった。

それはお店を良くしたいから。

お客さんのため。

そんな思いもあったのだと思う。

ただ時代は変わった。

女将さんのお子さんももう成人している。

いろいろ考えることもあったのかもしれない。

もちろん全部私の想像である。

本当のことは分からない。

代行の車の中で

帰りは代行だった。

私は殿にその話をした。

「女将さん、大将のモラハラが嫌で出て行ったらしいよー」

すると殿が言った。

「モラハラはやばいよね」

私とこむぎは黙った。

・・・・・・。

しばらく沈黙。

殿が言った。

「え?」

さらに言った。

「俺なんか間違ったこと言った?」

何も言わなかった

私とこむぎは顔を見合わせた。

そしてまた黙った。

・・・・・・。

別に間違ったことは言っていない。

モラハラはやばい。

その通りである。

非常に正しい。

正しいのだが。

何というか。

その。

うまく説明できない。

ただ。

私とこむぎが同時に黙ったことだけは事実である。

世の中には

殿は最後まで不思議そうだった。

本当に分からない様子だった。

だから私たちも何も言わなかった。

世の中には。

知らない方が幸せなこともあるのである。

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