前日のこと。
殿から、
「出てけー!」
「実家に帰れ!」
と言われた。
そうですか。
ということで翌日。
素直な母むぎは、
こむぎを連れて家出をすることにした。
ただし。
実家はなんとなく気が乗らない。
出てけっていうなら、
いっそ遠くへ行ったろ。
幸い、こむぎは夏休み中。
よし。
どっか行こう。
マイルでどこかに飛んでみよう
まず思いついたのが飛行機。
マイルもあるし、
今日このままどこかに飛んじゃう?
行き先も決めず、
マイルで行けるところを検索する母むぎ。
そしてここで初めて知った。
マイルって、
当日使えないのね。
知らなかった。
まあ、
当日に飛行機を取ってどこかへ行こうと思ったこと自体、
人生で初めてなんだけど。
マイルがダメなら新幹線だ
飛行機がダメなら、
新幹線がある。
飛行機より自由度がきくし、
本数もそれなりに走っている。
今からでも間に合う。
そこで決めた。
函館へ行こう。
ホテルを取って、
新幹線のチケットを取る。
どちらも、
ついさっき取ったばかり。
それでも出発できる。
旅の準備は手早いのだ。
バスなんて待っていられない
とはいえ、
函館はそこそこ遠い。
ここで新幹線を一本逃したら、
ホテルのチェックインがかなり遅くなりそう。
ということで、
駅まではバスを待たずにタクシー。
無事、
予定していた新幹線に間に合った。
よし。
行くぞ、函館。
ちなみにこのとき、
殿は普通に仕事中である。
一応、家を空けることだけは伝えておく
別に何も言わなくてもいいか、
とも思った。
でも一応、
一緒に暮らしている身として。
しばらく家を空けることだけは、
マナーとして伝えておこう。
あと、
捜索願とか出されたら面倒だし。
なので殿にLINE。
ただそれだけ。
どこへ行くとも、
いつ帰るとも言っていない。
「しばらく家を空けます」
すると。
始まった。
鬼電
すんごい鬼電。
電話。
電話。
また電話。
しつこさが、
よく表れております。
もちろん、
全部無視。
すると今度は。
鬼LINE
「どこ行ったんだ」
「いつ帰るんだ」
「無視するな」
まあ、
しつこい。
うるさい。
あのー。
出てけって言ったの、
だーれだっ。
一応、
大丈夫だから安心してくれと伝えた。
こむぎも無事。
それもちゃんとLINEした。
なのに今度は、
友人や親にまで連絡し始める殿。
友人からも連絡がきたけれど、
こちらにはあらかじめ事情を伝えていたので問題なし。
そして実母。
これは後から知ったことだけど、
殿から連絡がいっていたらしい。
ちなみにこの時点で、
母むぎは実母に何も話していない。
それなのに。
実母から母むぎへの連絡は、
一切なし。
さすがは実母である。
では、函館へ行ってきます
鬼電。
鬼LINE。
あまりにうるさいので、
もう一度だけ伝えた。
大丈夫だから安心しろ。
そして、
これ以上連絡してくるな。
しばらくは、
連絡すら取りたくない。
以上。
スマホを置いて、
こむぎと新幹線へ。
こうして母娘ふたり。
ほぼ思いつきで決めた函館への旅が、
始まったのである。

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